役所が非正規職員に依存している

地方自治体などの公的機関が、人を低賃金でしかも有期契約で雇っている現状は承服しがたい。
行政職だけでなく、公立図書館や公立学校など、資格が必要な職種でも非正規で低賃金で当たり前のように働いてもらっていることはよいことなのだろうか。
同じ東京新聞のちょっと古い記事だが、激務なのに低賃金で働いている非正規公務員の現状が報じられている。

正職員・正社員の差別意識
公務員は、採用試験に合格しているか否かで決定的に身分に差がつけられる。
高校や大学の新卒で採用試験に合格して入った人は、定年まで安定した生活が保障されるのが公務員の普通のあり方だ。
公務員でも民間でも、厳しい就職活動に勝ち抜いて正職員・正社員の身分を得たのだから、正職員・正社員の人々は自分たちが優遇されて当然だと考えるのだろう。
しかし、しんどい仕事を非正規労働者に担ってもらい、低賃金というだけでなく不安定な身分で働いてもらうことが正常なことと思えるだろうか。
俺たちはえらいがあいつらはダメな奴らだから当然のことだと、面と向かって言えるだろうか。
今、安定した身分に置かれている人であっても、たとえば病気や災害や事故などでその身分を剥奪されるかわからないのが現実だ。
公務員の労働組合ですら、非正規職員を雇って自分たちの仕事を補ってもらうことを「権利」として要求してきた歴史がある。
私も、公的機関で非正規労働者として働いた経験があるので、そのあたりのことはよく知っている。誰も助けてくれない、どこにも頼れないと思っていた。
殺伐とした社会でいいのか
公務員の仕事は、市場では解決できない仕事である。私はそう考えている。
なんでもかんでも市場にゆだねようという考えの人にとっては、公務員の仕事も民間の市場で解決できると考えるようだ。
本当にそれが正しいのか?
たとえば、公務員の人件費は税金の無駄遣いだ。だから、正規職員は最小限にしよう。労働者派遣会社に競争入札させて、一番安い会社の派遣労働者に担わせればよい。
しかし、公務員は職種によっては、かなりデリケートな個人情報を扱うこともある。それを有期契約の派遣社員や非正規職員にゆだねることがよいのだろうか。
派遣社員や非正規職員のモラルが低いと言いたいのではない。
倫理的な高潔さを要求するのなら、それなりの報酬が必要だと言いたいのだ。
来年の今頃は路頭に迷っているかもしれないという人に、倫理的高潔さを求めるのは虫が良すぎるのではないか。
かつて民間企業に産休・育休がなかったころでも、公務員にはあったという時代があった。
公務員の働き方は、先進的なモデルケースになっていた。
今では、役所が率先して劣悪な労働条件で働く人を作り出している。
こんな社会では、高潔な倫理意識をもって働くことがあほらしくなる人が増えていくのではないか。
真面目に額に汗して働くという勤労倫理が、かつての日本社会を支えていたように思う。
真面目に働いても報われないことが当たり前、の社会にしてはいけない。
